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未来会議⑨「第9章 VRとウェアラブル/INTERACTING」アーカイブ映像

第9回ホロス2050未来会議「第9章 VRとウェアラブル/INTERACTING〜モバイルの次に破壊的変化をもたらすプラットフォームがVRで、まさに今訪れようとしている〜」のアーカイブ映像(1:36:38)を限定公開いたします。公開版のサマリー映像(41:15)と併せてご活用ください。なお、当ページのURLは、会員の方のみにお知らせさせていただいております。その点にご留意いただき、URLの公開はお控えください。よろしくお願いいたします。

 2018年2月15日(木)19:00から、御茶ノ水デジタルハリウッド大学において、「ポケモンGO」開発プロジェクトの立ち上げに関わったNiantic, Inc.アジア統括本部長 兼 エグゼクティブプロデューサーの川島優志さんと、世界的に著名なCGアーティストの河口洋一郎さんをお迎えし、さらに杉山知之デジタルハリウッド大学学長にも加わっていただいて、第9回 ホロス2050 未来会議「 第9章 VRとウェアラブル/INTERACTING〜モバイルの次に破壊的変化をもたらすプラットフォームがVRで、まさに今訪れようとしている〜」を開催しました。

■アーカイブ映像(限定公開版/1:27:41)

■サマリー映像(公開版/41:15)

【概要】

・服部桂

 最初に、発起人のひとりであり、「ホロス2050未来会議」のベースとなったケヴィン・ケリー著『<インターネット>の次に来るもの』の翻訳者である服部桂が、今回のテーマ「INTERACTING」について解説。「インタラクティブというのは、何か反応してくれるということである。1990年代くらいにもVRのブームがあった。テレビとか新聞といったマスメディアは一方通行である。ところが、コンピュータとかネットワークは、インタラクティブ。こっちが何か質問すれば、何か答えてくれる。従来のメディアを超える何か新しいことができるのではないかと期待された。」と述べました。

・高木利弘

 続いて、発起人の高木利弘が『<インターネット>の次に来るもの』の「第10章 INTERACTING」について解説しました。この章のポイントは、以下の4つ。第一は、「VRはスマホの次のプラットフォームになる」ということ。ケヴィン・ケリーは1989年ころ、VRが出始めたころからVRに接していて、これは凄いことになると考えていた。しかし、当時は非常に高価でなかなか普及しなかったが、そこに大きなインパクトを与えたのがスマホだった。スマホは、VRにかかるコストを1000分の1にした、そして、VRの最初の成功例はポケモンGOである。第二は、「マシンは全身で操作するようになる」ということ。映画「マイノリティ・リポート」や「アイアンマン」で描かれているように、データを操作するのには、指先に限らず、腕や全身を使った動きが必須になる。電子音楽を発明した作曲家ブライアン・イーノは、「コンピューターを使ったときに困るのは、そこに十分アフリカがないことだ」と言ったが、コンピュータとボタンだけでインタラクションすることは、指先でダンスをしているようなもので、アフリカの人たちのように全身で歌ったり、踊ったりすることができない。そういうアフリカ的な世界を復活させるもの、それがVRである。第三は、「インターネットは感じて、経験するものになる」ということ。多くの経験の半分以上は、視覚より触覚から得ている。今のインターネットは、目で見るだけ、すなわち、視覚を使った判断が主だったが、これは中途半端な状態で、これからは五感すべてを使って、脳の古い皮質を総動員して、全身で感じて、経験するものになってゆく。病院に入院している誰かに寄り添ったり、遠くで行なっている実験を一緒に体験したり、宇宙旅行を仮想体験できるようになり、ネットを流れる「通貨」は「経験」になる。第四は、「新しいコミュニケーションの世界が開ける」ということ。五感はもとより、より多くの感覚、GPSや正確な温度、X線、花粉症のような分子感受性などを駆使して、テクノロジーとインタラクションするようになる。テクノロジーは、より親密さを増して、腕時計やスマートフォンよりもさらに近くにやってくるようになる。没入感が増して、我々はテクノロジー自体の中に飛び込んでゆくようになるであろう、といった解説をしました。

・川島優志

 続いて、Nianticの川島優志さんが登壇。川島さんは、Googleにウェブマスターとして入社。トップページのホリディロゴを日本人として初めてデザインした。2013年、当時まだグーグル社内のベンチャーだったNianticに加わった。Nianticは、Googleマップを統括していたGoogle副社長のジョン・ハンケが社内ベンチャーとして始めたもので、2015年、ポケモンGOのローンチ一年前に独立した。Nianticのミッションは「Adventure on foot(歩いて冒険)」というものである。ジョン・ハンケは、Google Earthの創業者で、机の前に座って、全世界を実際に旅しなくても眺められるようなものを作ってきたが、その結果たどり着いたのが、やはり現地へ行かなければだめだということだった。現代人は今、平均9時間ぐらい机の前に座っていて、毎年、570万人くらいの人が運動不足で死んでいると言われている。もっと人に外に出ていってもらって、体を動かして、多くの人と交流してもらい、よりよい世界を作っていきたいというのが、Nianticのミッションである。ジョン・ハンケは、Google時代にGoogle Glass用にField trip on glassという、その場所に行ったときに、その場所に関連する情報をGlass上に表示するアプリケーションを開発。残念ながら、多くの人に使ってもらうことはできなかった。そこで、ゲームの力を使って人々を外に出すことができるのではないかということで作ったのがIngressである。2016年に東京でやったときには、世界中から15,000人くらいがお台場に集まった。Ingressのダウンロード数は2,000万ダウンロード、200カ国くらいでダウンロードされた。それをもっと拡大するにはどうしたらいいかと考えて、ポケモンGOを開発した。2014年4月1日に、Googleがエイプリールフール企画で「ポケモンマスター採用試験」というのをやっていた。それを見て、ポケモンと組んだら面白いものができるのではないかと考え、すぐにポケモン社に連絡を取った。ポケモン社の石原社長は3週間くらいでIngressのレベル最高までいくほどのすごいゲーマーで、すぐに一緒にやろうということになった。ポケモンGOをリリースしたところ、一時はGoogleのトップページを超えるくらいのアクセスがあり、Googleのサーバチームが必死に支えてくれたことで、日本ではローンチ直後に一瞬回サーバーダウンしたものの、それ以外ではなんとかダウンせずにすんだ。アプリのダウンロード数は、7億5,000万ダウンロード。これまでユーザーが歩いた距離を合計すると158億km。太陽から冥王星までの距離の3倍で、人類が観測している最も遠い太陽系の天体までの距離を超えるくらい歩いた。フィリピンでは、父親が大きなバッテリーを持って、家族全員がそれにケーブルを繋いでみんなで散歩を楽しんでいたり、東日本大震災を被災した東北の支援では10万人くらい、横浜では200万人が集まった。Nianticでは、VRが現実を入れ替えるものであるのに対して、ARは現実を高めるものであると考えている。アップルのWWDCでもポケモンGOはARの代表であるとして紹介され、AndroidでもAR Coreが発表され、我々もApple、Googleも、スマホの次に来るのはARであるという共通認識を持っている。2020年にARは14兆円。対してVRは3兆円くらいになるだろうと予測されている。ARというと、眼鏡型デバイスと繋げて考えられることが多いが、デバイスと繋げて考えるとARの本質が見えなくなると考えている。ポケモンGOの良さは何だったかというと、何もないところに何かがあるとみんなが信じるような仕掛けをテクノロジーができるようになったところにある。みんながその場で一緒に何かを見て笑顔になれる。そういう体験を高めてくれるものである。VRでヘッドセットを被っても、その人だけの体験になってしまうが、ARには世界の人々を動かす力がある。ポケモンGOでは、水辺のそばであれば水辺のポケモンというように、現実世界と繋がりあった表現をしている。最近実装した天気機能では、晴れの日は晴れ、雪の日は雪、雨の日は雨というように、これも現実世界と繋がりあっている。AR+という機能では、ポケモンの後ろに回り込んだりすることができ、よりリアルに現実世界と仮想世界の融合ができる。最近買収したEscher Realityは、まったく違うデバイスで卓球をするとか、同じものを見ながらゲームをすることができる技術で、これから実装していく予定である。ポケモンGOプラスは、触覚を使ってコントロールできるもので、任天堂に協力して開発した。これから色々なウェアラブルデバイスが出てきて、人間とマシンの間のコミュニケーションがどんどん良くなっていく。糖尿病でほとんど歩けなったシアトルのおばあちゃんに、息子がリアビリのためにゲームが使えるのではないかとIngressを勧めたところ、1日3km歩けるようになり、合計1,500km、日本の半分くらい歩いてしまった。体も健康になり、休日にはパイを焼いたりして、地域の様々な年代の人を繋げる役割を果たしている。こういうものをテクノロジーだったりゲームの力で作れるというのが、Nianticが目指しているところである、という話をしました。

・河口洋一郎

 続いて、CGアーティストの河口洋一郎さんが登壇。杉山校長とは1988年ごろMITのメディアラボで一緒で、色々作品制作に協力をしてもらった。種子島出身なので、自分のテーマは宇宙と海。いつか宇宙に行きたいと思っていて、宇宙船の中でたいくつしないように、宇宙船の中で一緒に遊べるようなインテリジェントな人工生命を作りたいということでCGを始めた。5億年くらいしたら、太陽がどんどん熱くなって、地球は危ない。脱出しなければならないというサバイバルの本能で、5億年前のカンブリア紀からちゃんとやってみようと思って、人工生命の研究をやっている。5億年前のクラゲの時代から始まって、今までの5億年を研究したら、これからの5億年を予測できると考えている。1億年単位で9割以上の生物は死滅している。ミケランジェロやダ・ビンチがやったように、サイエンスとアートをどう融合するか。論理の世界のサイエンスと飛躍の世界である芸術表現をどう結びつけるかを考えている。今、東大でヒトデのインテリジェンスはどうなのか、という研究を学生と一緒にやっている。砂の落下にしても、地球上と宇宙空間では違うということを、物理的にどうこういうのではなく、実際に体験したい。5億年前の生物はまだ海の中にしかいなくて、陸をみたら陸が空いている。陸上を歩き回りはじめたら、空が空いている。1億年かかると、飛ぶ生物が出てくる。遊泳系の人工生物と、歩行系の人工生物、飛翔系の人工生物を並行して研究している。クラゲのような人工生物を宇宙に連れていくには、荒波に耐えたり、宇宙は危険が多いので、宇宙は危ないということをちゃんとクラゲに教えておかなければならない。このクラゲはアニメではなく、自分で必死に生き延びようとするようにプログラムしてある。メカ構造はちゃんとやっておこうということで、ロボットも作っている。自ら立って前に進まないと死ぬというというプログラムを与えた四つ足の人工生物や、バーを超えたら生き延びられるというプログラムを与えたミミズのような人工生物に、何千種類も試行錯誤をさせると、だんだん賢くなって課題をクリアできるようになる、といった話をしました。

・パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは、まず杉山校長が、「最初にヘッドマウントディスプレイに出会ったのは、1987年にMITメディアラボに行ったとき。そのころ服部さんもメディアラボにいて、NASAにいたスコット・フィッシャーがNASAヘッドというのを持ってきたのを見たのが最初だった。1968年にアイバン・サザランドがヘッドマウントディスプレイ を発明してから今年でちょうど50年。最終的には五感すべて、さらに、コウモリの声は4万ヘルツで、人間の耳には聞こえないのだけれど、それを周波数変換をして、「あぁ、こういう感じで鳴いているのだ」というように、我々が持っている五感の性能を超えるところまで行くであろう」と発言。次に服部が、「自分がメディアラボにいたころ、地下で怪しいことをやっている。1990年にケヴィン・ケリーが「サイバーソン」というイベントをやり、その時、日本を代表して自分が登壇し、その年の末にVRの本を初めて書いた。一番大事なのはリアリティである」と発言。続いて、高木が「Nianticが、人を外にださせようと思った理由は何なのか?」と質問したのに対して、川島さんは、「ジョン・ハンケは、禅とか仏教とか京都とか大好きで、落ち込んだときに京都へ行って、枯山水を見てパワーをもらったと感じたらしい。これは、何か目に見えないエネルギーがあるに違いないと思って、それがIngressのXMエネルギーのもとになっている。仏教とか禅とかにも通じることであるが、身体性への回帰というのが、VRとかARの議論の果てにあるのではないか。自分も仕事中によく歩く。アインシュタインや任天堂の岩田さんなど、よく歩いている話がある。歩いていると、創造的な気分になる。なんでそうなのかというと、足を動かしている刺激は、ちゃんと脳内に化学物質として出るということがわかっている。禅も、座禅を組んで呼吸法によって脳みそをハックするみたいなことをやっているが、Nianticがやりたいのはそういうこと。歩かせることで、だんだんドーパミンだとか脳内に出て、どんどん人を創造的にしていきたい。世界の潮流的には、マトリックスの世界に完全に向かっている。理性によってのみ世界が成立するといったような、戦争もない、病気もない、女性が本当に男性と平等になるためには、妊娠を完全に外部化したり、生理そのものを止めてしまえばいいといった方向に向かっている。Nianticがやろうとしているのは、そういう潮流に対するカウンターとかレジスタンス的なことで、もうちょっとテクノロジーを体を使うことに使ってみようよ、というようなところがある」と答えました。それに対して高木は、ポケモンGOの背景にそうした深い考えがあったことに驚き、「深いですね。西洋の近代合理主義に対して、東洋の身体論的なものの考え方。スティーブ・ジョブズは、禅僧に出会って、両者を融合し、それがアップルが急成長していく原動力となった。アップルというのは、芸術と技術を融合して、インタラクションの素晴らしさを皆さんに提供して大きくなっていった。その流れを、Nianticのジョン・ハンケが引き継いでくれているというのは、本当にうれしいことである」とコメントしました。河口さんは、「クラゲは、海にぷかぷか浮いているので、食われるだけ食われる。それじゃあということでイソギンチャクに進化する。それでも食われるということで、ヒトデに進化する。ウニも含めて、五角形の生物はどこに脳があるか分からない。群れる鳥とか、群れる魚とか、どこが指令を出しているとかいうことなく、衝突回避している。ミツバチとか蟻とかになってくると、女王蜂とか女王蟻というコントローラーが出てくる。人間は、群れる生物でありながら、衝突回避能力は低く、全体を制御する存在があるわけでもない。ひょっとすると、ポスト・ヒューマンとかは、女王蜂とか女王蟻のような存在が出てきて、制御するようになるのかもしれない。これからインターネットで人類がつながっていくとどうなるか、5億年の進化の歴史が参考になると思って研究をしている」と発言しました。川島さんは、「Nianticは、これからも世界を遊び場にして面白くしていきたい。まだ時期は未定だが、年末くらいには、次回作のハリー・ポッターをリリースするので、街中を魔法使いがたくさん歩き回るのではないかと思う」と発言。川島さんが、Ingressが文化庁のメディア芸術祭で大賞を取り、ポケモンGOが優秀賞を取ったことに触れ、メディア芸術祭を創設した河口さんに感謝の言葉を述べたのに対して、河口さんは、「 自分は審査員として、全体のそれまでの流行の中で、異端であり、次に来るところを選んでいる。実は、ゲーム、マンガ、アニメに賞を出すことに対して、上からすごい圧力があった。日本をダメにするのかとか、先生は東大で教えているのですよね、とか。面白いのは、今の主流じゃない、残された1割の中から新しい芽が出てくるということで、審査員としては、そこを探さなくてはならない。それが進化なのだ」と答えました。杉山さんは、「VRや一連の技術で再現性が高まれば高まるほど、自分の感覚に向き合うようになる」と発言。最後に服部が、「インターネットは70億人の人間の心が繋がった巨大な無意識である。自分がVRの本を書いたときに、一番いい言葉だなぁと思ったのは、ヘッドマウントディスプレイを初めて作ったVPL社のジャロン・ラニアーに「何がリアルなのか?」と聞いたときに、彼が答えた「スイッチを切ったときだ」という言葉である。皆さんも、今日の話は面白かったけれども、うちに帰って、風呂入ってビール飲んで、今日の講演の話は全部忘れて、ああ疲れたというときに、きっと本当のリアルを感じるのではないか」と結びました。

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