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未来会議①「第1章 ホロス2050とは?/BECOMING」アーカイブ映像

 このたびは、ホロス2050個人会員/法人会員にご加入いただき誠にありがとうございました。
こちらは、会員の皆さま向けに限定公開している第1回ホロス2050未来会議「第1章 ホロス2050とは?/BECOMING〜世界はもはや「1984」の世界に突入している!〜」のダイジェスト映像とフルサイズのアーカイブ映像です。公開版のサマリー映像と併せてご活用ください。
なお、当ページのURLは、会員の方のみにお知らせさせていただいております。その点にご留意いただき、URLの公開はお控えください。よろしくお願いいたします。

■アーカイブ映像(限定公開版/1:39:04)

■ダイジェスト映像(限定公開版/32:51)

■サマリー映像(公開版/3:12)

【概要】

・服部桂

 最初に、発起人の服部桂が「ホロス2050」の活動概要について説明しました。
 「ホロス」とは、米国『WIRED』創刊編集長ケヴィン・ケリーがその著書『<インターネット>の次に来るもの』(NHK出版)の中で「やがて地球全体が、全人類の集合的知能と全マシンの集合的行動が結び付いたもの”=ホロス(Holos)になる未来がやってくるだろう」と予言した「未来社会」のことである。「ホロス2050」は、この「ホロス」が2050年に一体どうなっているのかを予測し、よりよい未来社会を創るにはどうしたらいいかを皆で考えていこうというプロジェクトで、同書の12章の構成に合わせて、ほぼ月に1回、年12回のペースで未来会議を開催していく予定である。未来予測は、いつでも大きな勘違い、的外れに終わるが、「ホロス2050」では、トップダウンに大きな未来予測をするのではなく、本書のフィルターを通じて、将来、私たちの生活や生き方がどう変わっていくのか、ボトムアップで考えていきたい。未来を考えるとはどういうことか、それを考えていきたい。

・押井守

 次いで、押井守氏が登壇。
 未来を考えるという話は自分にふさわしくないと思い断ろうかと思ったが、未来を考えるとはどういうことなのか、それを考えるということならできると思い講演を引き受けた。未来には色がついている。素晴らしいとか、明るいとか。時代も文化、文明もどんどん高度に複雑に進化していく、といった未来信仰、科学信仰がある。しかし、高度に複雑に進化していくことと、幸せは別のことである。人間だけが、自分の置かれている世界について考えることができ、未来とか過去とかを弄ぶことができる。動物には未来も過去もない。人間はなぜ未来を考えるようになったのか、そのことを考えることからしか未来を考えることはできない。

・若林恵

 次いで、若林恵氏が登壇。
 自分自身の人生は、幼少期が人生の絶頂で、あとは下る一方である。『WIRED』の標語は「未来はすでにここにある」というもので、今、当たり前だと思っていることについて、本当にそれでいいのかどうかを考えることが、未来を考えるということではないか。

・高木利弘

 そして、発起人の高木利弘が、「第1章 ホロス2050とは?/BECOMING」のディスカッション・テーマ「世界はもはや「1984」の世界に突入している!」について、一枚の図をもとに解説しました。
 第1章には、「過去30年、予想もつかないほどの大きな変化があった。これからの30年、予想もつかないほどの大きな変化が起きるであろう。インターネットはまだ始まりの始まりに過ぎない。いまここで始めるのがベストである」といったことが書かれている。この趣旨をモチーフに、現在を基点に過去30年の歴史と未来30年の歴史を「◯」と「△」で理解することができないか、といった話をしました。
 「◯」は「インターネット」、「△」は「ピラミッド」を表している。「インターネット」は、無数の網の目が地球全体を覆っているようなもので、中央を介することなく、水平分散的なコミュニケーションができるようになっている。「インターネット」が登場するまで、人類は有史以来、ずうっとピラミッド型の社会を形成してきた。軍隊、大企業、官僚、学校、マスメディア、そして近代国家そのものがピラミッド型構造をしているのは、大きな集団が号令一下、一斉に何かを行うのに最も適しているのがこのピラミッド型のコミュニケーション構造だからである。ピラミッド型社会は、基本的に命令社会である。大型コンピュータのように、ピラミッドの頂点にいる一握りのエリートたちだけが考え、あとは命令に従って動く手足となれ、という仕組みになっている。
 こうした人類の歴史に、大きなパラダイムシフトをもたらしたのが、パーソナルコンピュータの誕生であった。1984年、有名な「1984」のCMとともに世界初のパーソナルコンピュータ、Macintoshが誕生した。
 Macintoshは、ジョージ・オーウェルが小説「1984」で予測した暗黒の未来社会、ビッグブラザーが人々を洗脳し、完全にコントロールするピラミッド型の管理社会から人々を解放するものとして誕生した。続いて、1994年に商用インターネットが誕生し、2007年にスマートフォンが誕生。コンピュータの専門家ではない一般の人々が、コンピュータとインターネットのパワーを手にすることができるようになっていった。
 パーソナルコンピュータ、インターネットが登場しておよそ30年。この間、マスメディアの衰退が象徴しているように、「△」はどんどん衰退し、「◯」がどんどん大きくなっていった。
 こうして「◯」と「△」が拮抗し、既に人々のコミュニケーション・インフラとなっている「◯」の上で、「△」がグラグラと揺れている。そうした現象が、今、世界中で起きていると考えられるのではないか?
 ケヴィン・ケリーは「ボトムアップの力が世界をひっくり返す」と書いているが、「専門家/エリート」中心の社会から、「一般人/アマチュア」中心の社会へ、「命令」で動く社会から「会話」で動く社会へと、社会全体が大きく移行しつつある。
 この先30年。「◯」がもっと大きくなってゆき、「△」がもっと小さくなっていくという予測が成り立つが、もしかしたら、「△」の頂点にいる「専門家/エリート」たちによって、さらに強固な「△」が形成される未来社会=ディストピアがやってくるのかもしれない。

・押井守

 この説明に対して、押井氏は、相当わかりやすい話だと思う。ただひとつ、意地の悪いツッコミを入れると、軍隊は確かにピラミッドだった、将来の戦争で、指揮命令系統がピラミッドだとやばい、というところからインターネットが誕生した。実はインターネットを作ったのは軍隊だった。近代国家は確かにピラミッドだが、人類はずうっと昔から国家のようなものを作ってやってきた。5%の人間がいたからこそ、文化も文明も発達してきたともいえる。人類が、皆で平等に話し合うというのではなく、ピラミッドを作ってやってきたのは何故か、それを問う必要がある。そして、ジョブズは確かに世界を変えたが、どう変えたかを問うことが大切だ。

・若林恵

 若林氏は、今年のサウス・バイ・サウスウエストは、自分にとっては面白かった。何が面白かったかというと、シリコンバレー的な「テクノロジーが世界をよくしていくんだ」みたいな楽観主義があったが、その結果出てきたのがトランプかよ、という議論。「ネットにおける女性の問題」「ネットにおけるイスラムの問題」などたくさんのテーマがあったが、「IS・ネオナチとソーシャルメディア」とか「AIとファシズム」など、かなり暗黒なパネルも多かく、大声で怒鳴りあったりしていた。ただ、皆が参加して議論しながら未来を創っていく感じを見ることができて、それが面白かった。

・服部桂

 服部は、このふたりを呼んで本当によかった、見事に「明るい未来」論を否定していただいた。ケヴィン・ケリーは、『THE INEVITABLE(避けられないもの)』という原題をつけたが、大事なことは避けられるか避けられないかではなくて、自分で選べるかどうかということだ。Macの話が出てきたが、1960年代、大型コンピュータが三角形の支配のために使われ、ベトナムの爆撃のシミュレーションに使われたりしていたが、そうじゃないんじゃないか、と言った人たちがいた。若者たちがコンピュータに選ばれ、ベトナムに送られて生きていけるかどうかわからないという恐怖に怯えていた時に、コンピュータはパーソナルじゃなければいけないと言ったアラン・ケイのような人がいた。自分で自分の運命を決めるんだと、そのためにテクノロジーは使われるべきではないか。

・高木利弘

 そして高木が、ちょうど今、「バベルの塔」の絵が来日しているが、「バベルの塔」は、人類が神に挑戦するような高い塔を建てようとしたので、神によって互いに話している言葉が通じないようにさせられ、会話が成立しないことによって失敗に終わるという寓話である。今、インターネットによって、コミュニケーションの量は飛躍的に増えたが、ヘイトやフェイクに満ち溢れ、会話が成立しているとはいえない、混乱状況にある。(「△」が一万年の歴史を持っているのに対して、「◯」はたかだか30年。ケヴィン・ケリーが言うように「始まりの始まり」にあるにすぎない。)人類は今、「◯か△か×か」その選択を迫られていると考えられるのではないか? いかにして会話を成立させるか、そこに問題解決の鍵があるのではないか? と言ってディスカッションを結ぼうとしたところ、押井氏が、もう一言だけ言いたい、といって話を続けました。

・押井守

 昔、ラジオが登場したとき、ブレヒトという劇作家が、ラジオで何ができるかを考える前にラジオが生まれた、みんなラジオで何をしたらいいか分からなかった。初めてラジオが有効に機能したのは、政治宣伝であった。ナチスであり、米国でもフランクリン・ルーズベルト大統領が「炉端談話」という番組で、定期的に国民に語りかけた。インターネットが出てきたときに思い出したのは、そのことだった。新しい技術が出てきたときに、まず考えなければいけないのは、人間とのギャップである、といった「もう一言」をいくつも続けた後、未来会議は終了。参加者は、「押井ワールド」を堪能したのでした。

【次回の予告】

 第2回ホロス2050未来会議「第2章 人工知能の現在/COGNIFYING〜どうすれば人間はもっと人間らしい仕事に集中できるか?〜」は、6/2(金)19:00より、デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスで開催します。
次回は、第1回の反省をふまえ、開催時間を1時間延長して19:00〜21:30までとし、ディスカッションに十分時間が取れるようにするとともに、ディスカッション終了後、参加者の皆さんの交流を深められるように懇親会(軽食&ドリンク付)も開催いたします。

未来会議①「第1章 ホロス2050とは?/BECOMING」全文

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