第5回ホロス2050未来会議「第5章 所有権よりアクセス権/ACCESSING〜デジタル・ネイティブはわれ先にと前へ進み、未知のものを探索していく〜」のアーカイブ映像(1:36:39)を限定公開いたします。公開版のサマリー映像(34:10)と併せてご活用ください。
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■アーカイブ映像(限定公開版/1:36:39)
■サマリー映像(公開版/34:10)
【概要】
・服部桂
最初に、発起人の服部桂が『<インターネット>の次に来るもの』の「第5章 ACCESSING」の概要について簡単に触れ、「これからは自分が持っているのは古い、そうではなくアクセスを自由にしたほうがいい」「ただし、アクセスが止まったらどうするのかという問題がある。アクセスを人に頼むということは、それが確実に自分の生活を保証してくれなければならない。そうした信用の問題もこの章で述べられている」と解説し、アクセスには保証とか信用をどう担保するかという大きな課題があるという指摘をしました。
・高木利弘
続いて、発起人の高木利弘が、「なにも持たなくていい」「アクセス(つながり)を考えればいい」「ただし、リアルタイム、オンデマンドで欲しいときにすぐに手に入れられなければならない」という点がポイントであると解説。続いてケヴィン・ケリーが列挙している「5つのテクノロジートレンド」について説明。1番目は「非物質化」。家や車でさえモノではなくサービスとして考える。2番目は「リアルタイムのオンデマンド」。ライブ感、欲しいときにすぐに手に入れられなければならない。3番目は「分散化」。これまでは国が独占的にお金の発行権を持っていたわけだが、そんお金だって分散化できる。そうすると国とは何かが問われてくる。国だってサービスのひとつだという発想の転換が必要。4番目は「プラットフォームの相乗効果」。プラットフォームというのは土台である。その上にエコシステムを作ればいい。5番目は「クラウド」。雲の上には何でもある。あとは、それらをどうつなぐかを考えればいいということである、といった話をしました。
・玉置泰紀
続いて、玉置泰紀さんが登壇。「仮想から実装 所有から空間」と題し、常に変容していく本、図書館のイメージとして、ボルヘスの『バベルの図書館』を紹介。15世紀から18世紀くらいに王族とか貴族が自分の家の中に「びっくり部屋」を作り、変な石だとか動物の剥製だとか色々なものを収集した。たとえば大英博物館もそうした「驚異の部屋」から出来たものである。東京大学情報学環でやっている「ビヨンド・ブック・プロジェクト」の中で自分が提案したのが、この「バベルの図書館」で、Webサービスとしての図書館テーマパークを作りたいと考えている。世界最大の電子図書館はグーグルが作っている。欧州はヨーロピアーナを作っている。ひるがえって日本はというと全くできていない。日本政府が主張しているソサエティ5.0は「サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した超スマート社会」ということで、アクセッシングのことである。現実の世界の上に過去の地形や歴史、ゲームやファンタジーの世界を重ねるメタ化するのもアクセッシングのひとつであり、メタ観光学会を作りたいと考えている、といったことを話しました。
・河崎純真
続いて、河崎純真さんが登壇。自分は、50年先に偏りを持った人でも生きやすい社会を作りたいと考えている。今の150年前に作られた明治政府以来のシステムでは、次の時代についていけない。エストニアは、9回占領されて9回独立するという悲しい歴史を持っている。1991年8月20日に独立を回復して、今に至る。エストニアが何故インターネットに強いかというと、独立したときにちょうどインターネットが始まったのと、昔、KGBの暗号解析本部があって、エンジニアがたくさんいたから。エストニアは、ベンチャーのインキュベーションやX-Road(システム関連基盤)、電子政府、ブロックチェーンに力を入れているが、それは過去、何回も占領されたことが大きい。所有していると失うので、リアルに所有するのではなく、クラウド上に国家や民族を保存しようと考えた。COMMONS OSという電子政府のソリューションを開発している。たとえば今、南富良野で孫泰蔵さんらと一緒に仮想通貨を使って経済圏を作ったり、Next Commons Labという団体で石川県加賀市に独自通貨の提案を今進めている。エストニア、グルジア、ドバイ、イギリス、シンガポール、スイスなど色々な国で国家としてブロックチェーンを使っていこうという動きがある。COMMONS OSでは、独自通貨、税、条例、住民の管理、メッセージングをブロックチェーンを使って超低コストで運営しようとしている。仮想通貨ウォレットとか、ランニングコストは月3,000円もかかっていない。エストニアの電子政府のランニングコストは、イギリスの0.3%くらいしかかかっていないと言われているが、ブロックチェーンを使うともっと安くなる。将来的には、国家運営が数十万円くらいでできる時代がやってくる。全部我々が作るのではなく、すでに保険のブロックチェーン・システムとか、公的個人認証、会社登記、著作権のブロックチェーン・システムとか出てきているので、そういうのを組み合わせながらやっていこうとしている。WindowsをいくらアップデートしてもWindowsにしかならない、だったらLinuxを作ってしまおうという発想で、COMMONS OSでは、今の社会システムをチェンジするのではなく、初めから新しい社会システムを作ってしまおうとしている、といった話をしました。
・パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、まず服部がジャック・アタリの『所有の歴史』を引用し、何かを持っているということは死に対する防御という意味があり、簡単に「所有は古いよね」「アクセスは便利でいいよね」と言えないところがあると指摘。続いて玉置さんが、『東京ウォーカー』『九州ウォーカー』『東海ウォーカー』『関西ウォーカー』とウォーカーシリーズをやってきた中で、その土地その土地の情報を単に紹介するだけでなく、行政と一緒にイベントをやったり、地域活性化に関わってきた。コミュニティデザイナーの山崎亮さんと一緒にコミュニティ作りも色々やってきたが、持続性を考えると「コンテンツが大事だよね」ということになってきている。自分が今一番積極的に関わっているのは「地域アート」である。まだ何もないところから地域の人たちと何度も話し合いをして、主催者集団を作って、「大阪カンバス」や「京都国際映画祭」といったアートフェスをやってきている。アートフロントギャラリーの北川フラムさんともよく一緒にやってきたが、「大地の芸術祭」「瀬戸内国際芸術祭」「北アルプス国際芸術祭」「奥能登国際芸術祭」など、今は何万人、何十万人もお客さんがやってきて、地元の人々もウェルカムだが、最初のうちはものすごい反対運動にあったこともある、と発言。続いて河崎さんは、AirbnbとかUberとかは、単一企業としては儲かっていて、ネットワーク効果的にそれぞれの地域コンテンツの価値が高まってるというのはその通りだと思うが、ブロックチェーンなどテクノロジートレンド的な観点から言うと、彼らは5年後消えているかもしれない。何故なら、彼らは単なるプラットフォーマーで、中間搾取の形がちょっと変わっただけだからである。AirbnbとかUberとかはオープンソースを使って簡単に作れるので、コストはだんだんゼロになってゆき、ただマッチングをするためだけにAirbnbとかUberを使う必要は全くなくなってくる、と発言。それに対して服部は「まさにブロックチェーンというのは中央で決済するのではなくて、みんなで決めて価値や信用を担保する仕組みで、そうした水平分散型のネットワークが幾何級数的にものすごい勢いで伸びている」とコメント。玉置さんは「共産主義ってそもそも何だったんだろうと最近よく考える。共有する、シェアするというのが次回のこの会議のテーマだが、それが技術的にできていなかったから共産主義って失敗したのかなと思う」「第二インターナショナルというのは非常に重要で、要するに社会主義を否定して共産主義でなければ(資本主義に)勝ち抜いてゆけないとしたのだが、そこからスターリンにまでいってしまった」とコメントしました。続いて高木が、次回11月30日(木)開催の「第6回ホロス2050未来会議」のテーマは「シェアリング」。ケヴィン・ケリーは「デジタル社会主義には中央政府はいらない」と書いている。ピラミッド型の組織を作らなくても地球の裏側の人たちとコミュニケーションできるようになるので、大企業はいらないとか、国家はいらないという話になってきて、だから今、国家とは何かということがものすごく揺れている、と発言。服部は、まさに「国家自体が古いよ」ということが、カタルーニャの独立運動とか実際に起きている。もともと昔、小さな村で生活していたころは、インターネットのような原始共産制で、個人がモノを持っているのではなく部族のものであった、と発言。それに答える形で河崎さんは、「所有からアクセスへ、つながりへ」というのは、実は所有しなくなるということではなく、所有の仕方が変わったということではないか。人は何故所有したいかというと、自分を拡張したいからで、安全の欲求でもあるのだが、自分がコミュニティに広がっていくというのは、持っている範囲が広がるということを意味している。Airbnbで泊まっている人は世界中の家を所有している、Uberを使っている人は世界中のドライバーを所有しているので、実は結構豊かなんじゃないかというイメージがある、と発言しました。最後に高木が、実はアクセスというのは所有がもっと拡張したものだという河崎さんの話は非常に面白かった。所有して縮こまっている状態から「解脱」して、色々な人と時間や空間を共有できたほうがうれしいし、そういう喜びに向かっていくというところにビジネスのヒントもあるし、未来の生活のヒントもある。日本のマネーの「円」は「縁」、人と人との縁からきている。これまで、人と人のつながりをどうメッセージングするのかという役割をマネーが果たしてきたのだが、次回はそれが未来社会においてどうなるのかという話をしたい」と結びました。
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