第6回ホロス2050未来会議「第6章 ポストマネー、ポスト近代/SHARING〜デジタル社会主義に国家は出てこない〜」のアーカイブ映像(1:45:26)を限定公開いたします。公開版のサマリー映像(47:31)と併せてご活用ください。
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■アーカイブ映像(限定公開版/1:45:26)
■サマリー映像(公開版/47:31)
概要】
・服部桂
最初に、発起人の服部桂より、この「ホロス2050未来会議」が、『WIRED』創刊編集長のケヴィン・ケリーが著した『<インターネット>の次に来るもの』の12章、12のキーワードをもとに12回シリーズで開催してきていること。そして今回、12章のうちの6章、ちょうど折り返し地点にまできたこと。私たちは、SNSなどでよく「シェアする」ということを言っているが、「シェアする」ということの本当の意味はどうなのか、ケヴィン・ケリーは「デジタル社会主義」という言葉を使っているが、そういった原始共産制のような社会が、本当に「ポスト資本主義」と言われる我々の未来社会なのか、といったディスカッションがなされるのではないか、といった話をしました。
・高木利弘
続いて、発起人の高木利弘が、この「第6章 SHARING」のポイントとしてケヴィン・ケリーが挙げているのは、「シェアはまだはじまったばかりである」「共同する度合いを上げていくということは、文化のレベルを上げていくことである」「これからはシェア可能なものはなんでもシェアされていく」「この星全体が新たな共同体となる」「注目されるのはブロックチェーンの技術である」「中央を介さずに信用を交換できるようになる」といったことであると解説。そして、国家がトップダウンで命令する専制的な「政治的社会主義」と違って、未来の「デジタル社会主義」は、個人の自律性を重視し、脱中央集権化、分散化を進めていく。「シェア」は、協調作業の程度によって「シェア」「協力」「コラボレーション」「集産主義」の4つに分類できる、といったことが書かれている、といった話をしました。
・中山亮太郎
続いて、中山亮太郎さんが登壇。「Makuake」は、もともと「サイバーエージェント・クラウドファンディング」という名前で2013年にスタートしたが、この10月に「Makuake」に名称を変更した。新しい挑戦をするために生じる全てのハードルを無くすことをミッションにしている。「実行したいアイデア」と「実行を願う応援顧客」のマッチングサービスである。寄付というよりは購買行動に近いが、応援の気持ちも入っているので「応援顧客」という形で表現している。もはや「資金調達」だけではなく、「資金調達」「テストマーケティング」「PR・顧客獲得」「実績づくり」という全部で4つの機能を果たしている。メーカーなどは、テストマーケティングに重きを置くようになってきている。普通、お店がオープンしたとか、アニメを公開するというと、広告宣伝費に数百万円とかかかってしまうが、「Makuake」に出すことで、色々なメディアに取り上げられたり、拡散が起きたりするようになってきている。そして、これだけ実績があるということを示すことで、販路開拓とかが非常にやりやすくなってきている。「Makuake」は、アクセス数が伸びてきたことで、単なる集金ツールからメディアへ進化してきている。全国47都道府県の80の地方銀行・信用金庫との連携ができてきていて、色々な案件の相談をされるようになってきている。一方、販売のほうでは、東急ハンズ渋谷店に販売コーナーができたりしている。これからのビジョンとしては、「新しい挑戦をするために生じる全てのハードルを無くす」というミッションを実現するために、「実行者」「応援顧客」「小売」「メディア」「銀行」に加えて、「アイデア」「投資家」「協力パートナー」もシームレスにつなげてゆきたい。そして、日本だけでなく、世界中をつなげて新しい挑戦の後押しができる事業にするというというミッションを、この10年の間に必ずやり遂げたいと思っている、と結びました。
・城宝薫
続いて、城宝薫さんが登壇。「テーブルクロス」は、「食べログ」「ぐるなび」「HotPepper」と同じような飲食店の予約検索サービスで、ここから予約をすると、途上国の子どもたちの給食支援ができますよ、というような形で運営をしている。小学生のときに、インドネシアに行ったときに、同じ年齢で、国が違うと、食べるために働かなければならないということを知り、寄付とかボランティアをやっていた。高校一年のときに、アメリカの障害者支援をやっているボランティア団体に行ったところ、どうやって利益を上げながら社会貢献をするのかということを徹底的に議論をしているのに「なるほど」と思い、途上国の支援を、寄付・ボランティアではなく、事業でやっていこうと決めた。大学時代、飲食店に広告を売る代理店でアルバイトをしていて、この飲食店向けの広告業界に風穴を開け、新風を吹き込みつつ、途上国支援を継続してやっていこうと決めた。「人」「モノ」「金」「情報」、何もないところから始めて、身内から2,500万円、信金から2,000万円、クラウドファンディングで3,000万円集めたり、VCから出資を受けたりして、今から4年半前に、1億円ぐらい集めて事業をスタートした。既存のグルメアプリの場合、初期費に加えて、毎月48,000円くらいの掲載料がかかる。「御茶ノ水」「焼肉」で検索してトップに表示されるには、毎月48万円くらいかかるのだが、それを真逆に、無料で広告ページ、管理画面を提供し、ひとりの集客に対して180円の広告費をいただきます、というビジネスモデルでやっている。予約するときは、だいたい4人くらいで予約するので、1件あたり720円くらいの売上になる。飲食店の人たちに、いきなり寄付をしてくれというのは難しいが、今まで支払っていた広告費の一部が、地球の裏側の誰かのためになっているということで、全国の飲食店と世界をつなげるという役割を果たしている。1食あたりの給食支援を、国連がだいたい30円であるとしている。そこで、180円のうち30円が給食費、残りの150円で運営をしている。現地に対して教育の支援をしているNPOと連携する形で給食費を届けている。途上国の子どもは、ゴミ山に行ってゴミを拾ったり、弟の面倒を見たりということを優先させて、なかなか学校にこない。そこで、「給食を配るよ」ということで、子どもたちを学校に呼びよせ、文字を教えたり、本を読めるようにして、貧困を脱出する一歩にしてもらっている。去年までは、1カ月500食くらいしか届けられなかったが、今年に入って、1カ月1万食、届けられるようになってきた。全国で飲食店契約数6,000店舗くらいになり、メディアへの掲載、女性の応援プロジェクトに選んでもらい、露出が高まったというところが大きい。他のグルメアプリより格安でサービスを提供できているのは、顧客とお店の通話をロボットが文字化するなど、人の手がかからない形でサービスを提供しているから。ミッションとしては、飲食店のオーナーを幸せにする、途上国の子どもたちの給食支援をしていくはもちろんだが、それ以上に、日本のチャリティ文化自体を変えたい、日本人に合った寄付モデルを確立したいと考えている。予約をするだけで、誰かのためになる。「チャリティ予約文化創り」運動を、飲食店から、ホテルの予約、ネイルサロン、ヘアサロンの予約という形で広げてゆき、日本から世界へ広げてゆきたいと考えている、といった話をしました。
・パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、まず城宝さんのプレゼンに対して、中山さんが「日本人らしい寄付の文化を作っていきたい、と言っていたのがすごく胸に刺さった。どうやって継続的に事業を続けるかということで、入口のところで、しっかり稼ぐというところから目を逸らしていないのが、自分としては気持ちがよかった。」と感想を述べた。城宝さんは、「知識がなかったので、自分はなんでもできてしまうのではないかという自信を持っていた。政策金融公庫を回っていて、なぜ、学生で初めて融資を受けられたかというと、卒業したら就職できるよね、という問いに対して、もうスタートしているんで、みたいな形で、絶対に引かないという決意を見せられたから。」と発言。一方、城宝さんは、中山さんのプレゼンに対して、「今日の話を聞いて、すごく社会が変わるなと思った。クラウドファンディングが、こういうのがあったらいいなと思っている人と、応援したい人とが、よりハードルが低く出会える場になっていくというのは、すごく力強いことだと思う。」と感想を述べた。中山さんは、「シェアというと、ヨーロッパはどちらかというとNPO的で、正直大きなビジネスは生まれていない。一方、北米は、AirBnbとかUberとか、かなり資本主義的なシェアリング・ビジネスが出てきている。そこで、考えてみたのだが、シェアリングではなく、セラブル(Sellable)と考えたほうがわかりやすいのではないか。AirBnbは、空いている部屋を誰でも売れるようになったということだし、シェアバイクは、普通に自転車を時間貸ししてますというビジネス。自分の時間を売れるようになった、スキルを売れるようになった。「Makuake」でも、たとえば『この世界の片隅に』のエンドロールを売れるようになった。「セラブル」「セル エブエリシング(Sell everything」と言ったほうが、より実体経済に基づいていて、シェアだけだと図書館とかノンプロフィッタブルな意味に近いのかもしれない。「メルカリ」なんかも「シェアリング・エコノミー」とか言われているが、自分たちでは、そう言っていないと思う。いらなくなったものが売れるようになった、セラブルになったということではないか」と指摘。高木は、「出版社というのは、500年前のIT革命、グーテンベルクの印刷革命の申し子であり、革命の担い手であるはずなのに、今のIT革命にブレーキをかけようとしている。情報というのは、この先、限りなくタダになるのだから、その先、どのようなアクションを起こすかが重要になってくる。「Makuake」の場合は、アイデアを出す人、応援したい人、買いたい人をうまくマッチングさせる、新しいメディアになってきている。「テーブルクロス」の場合は、食べるということと、その先に、途上国の人を支援するというアクションを結びつけている。こういったことを、出版社はやっていないのではないか。つまり、新しいメディアは、読むだけではない、見るだけではない。その先のアクションまでサポートしている」と、メディアの観点からシシェアを分析。中山さんは、「自分たちが扱っている情報は、まだアイデアの段階、流通する前の段階の情報なので「零次情報」と呼んでいる。そして、アマゾンなどで販売されるのが「一次販売」だとすれば、我々のは「零次販売」。昔から予約販売というのはあったが、予約販売ではぜんぜん、そのモノの良さが伝わらない。今は、動画とかたくさんの写真とかをスマホでも見せることができ、ストーリーをしっかり理解してもらいながら、作ってほしいかどうか判断してもらえる。SNSだけでなくネットメディアが膨大に出てきているのも、拡散しやすくなっていて、それに乗って伸びているのかもしれない。我々がやっているのが零次情報・零次流通とすると、「メルカリ」や「ヤフオク」などは二次情報・二次流通と考えられる」と独自の「零次情報・零次流通、一次情報・一次流通、二次情報・二次流通」論を展開。次いで、高木の「今回のテーマは「ポストマネー」ということなのだが、「ポストマネー」はマネーがいらなくなるということではなく、マネーの使い方が変わってくることなのではないか」という問いかけに対して、中山さんは、「お金というものを軸足に考えたときに、面白い事象が出てきている。売れるかどうか分かったら、銀行も売り手もびっくりするくらいついてくる。全世界で1億台売れるということが分かったら、全世界の小売が殺到する。といったようなことが、実は「Makuake」で起きている。商品性の判断が、作る前にできている、そういう時代がやってきている。お金が先に立たない。お金が自動的についてくる。世の中の順序がちょっと変わり始めている。よく「評価経済」とか言われるが、その中のひとつとして「商品力ポテンシャル経済」みたいのができ始めている」と答えた。そして、城宝さんは「弊社のサービスでいうと、何時何分、誰がどのような予約をしているか、窓側の席で綺麗な景色を見たいですとか、サプライズでケーキを用意してくださいとか、細かい情報までロボットがすべて拾ってきている。年代や性別が声認識でできるようになってくると、3年残っているお店、5年残っているお店は、今の時期、これくらいの予約状況だということが分かってくる。そうなってくると、そのお店が次の1店舗を出したときに、資金が回収できるのかどうか、というのが正直、わかり始めている。情報が先に進んでいるからこそ、お金が後からついてくるというのが、同じだなぁと思った」と答えた。ふたりの回答に対して、ビッグデータの専門家でもある橋本は、「これからは、「Makuake」でファンドレイジングを成功させてしまう人とか、どんどん「テーブルクロス」を使って、予約をして途上国の人たちを支援するような人が、未来の人材として必要な人ということになるのではないか。これまでは、TwitterやFacebookのフレンド数でその人の価値を測っていたりしたが、それよりもずっと「Makuake」や「テーブルクロス」の実績のほうが、その人材を測れる指標になるのではないか。そして、そういう指標をFacebooktとかに貼っておくと、お金が集まりやすくなったり、会社に入りやすくなったり、彼女や彼氏ができやすくなったらいいなと思った」と指摘。最後に、中山さんは「クラウドファンディングというのはここ3年、4年、IoTとか、フィンテックか、シェアリング・エコノミーと並んで一番のバズワードだった。バズワードというのは、パズワードのままビジネスモデルを構築するとやばいことになるので、その本質を見誤らないほうがいいと思う」。城宝さんは「これから社会にとって利便性よく、インパクトがあるような形になるのは、いかにして一社だけではなく、複数社連携できるモデルを作れるかが鍵になるのではないか。今日は、色々な観点から物事を見ることができるのだ、ということを学んだ。ありがとうございます」と結んだ。
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