第8回ホロス2050未来会議「第8章 さようならシリコンバレー/REMIXING〜成長はリミックスから生まれる〜」のアーカイブ映像(1:27:41)を限定公開いたします。公開版のサマリー映像(43:42)と併せてご活用ください。なお、当ページのURLは、会員の方のみにお知らせさせていただいております。その点にご留意いただき、URLの公開はお控えください。よろしくお願いいたします。
2018年1月11日(木)19:00から、御茶ノ水デジタルハリウッド大学において、D4DR代表でインターネットビジネスコンサルタントの藤元健太郎さんと、studio-L代表でコミュニティデザイナーの山崎亮さんをスペシャルゲストにお迎えして、第8回 ホロス2050 未来会議「 第8章 さようならシリコンバレー新ビジネス/REMIXING〜成長はリミックスから生まれる〜」を開催しました。
■アーカイブ映像(限定公開版/1:27:41)
■サマリー映像(公開版/43:42)
【概要】
・服部桂
最初に、発起人の服部桂が「この章は『<インターネット>の次に来るもの』の中で唯一、コンテンツについてきちんと書いている。マクルーハンは、昔の思いを新しいテクノロジーで再度確認していくのがイノベーションであると言っているが、ケヴィン・ケリーがここで言っているのは、人間の資産とか思想を、どうやって混ぜながら新しいものにグレードアップしていくかということで、そういった論点から、色々論議ができればいい」と述べました。
・高木利弘
続いて、発起人の高木利弘が『<インターネット>の次に来るもの』の「第8章 REMIXING」について解説しました。この章のテーマは、「すべてのものがデジタル化し、液状化し、サービス化する。それによって、アンバンドル化され、リミックスされていく」というもので、ポイントは以下の4つ。第一は、「すべてのものが基本要素に分解される」ということ。たとえば、新聞や雑誌。これまで新聞や雑誌は、バルクで、情報を束ねてセットで売るからお金を取れた。しかし、これが解体される。放送もそうである。テレビやラジオの番組、特にニュースや情報番組も断片化し、欲しいときに欲しい情報を届けなければならなくなる。しかし、今の放送業界には、それができない。したがって、視聴されない、そっぽを向かれる状態になっている。金融や製造業も同様、元素周期表まで要素分解される。第二は、「すべてのものは再合成できる」ということ。新しい組み合わせこそ、テクノロジーのイノベーションの基本であり、それが経済を牽引していく。たとえば、北海道旭川市の「旭山動物園」。市営の動物園で、交通の便もけっしてよくない。このため、来場者がどんどん減ってゆき、もうどうしようもないというところまで追い詰められたが、スタッフが、本当の動物の素晴らしさを伝えたいと展示方法をがらりと変えただけで、大人気となった。第三は、「ワクワクする・感動する・会話できている」再合成であるかどうか? それが、成功するリミックスの法則であるということ。NHKスペシャル「人体」が示したように、「人体」は巨大な水平分散ネットワークである。各臓器は、脳を介在することなく、血液やリンパ液を通じて、それぞれメッセージ物質をやりとりして情報交換をし、脳もこのメッセージ物質によって大きくコントロールされる臓器の一部にすぎない。NHK Eテレの「ダイアモンド博士の“ヒトの秘密”は、人類とチンパンジーが遺伝子的には1.6%の違いしかないこと、人類は会話、コミュニケーションによって社会を形成する方向に進化した猿であることを明らかにしている。今、人類は、インターネットを通じて70億人がコミュニケーションできる段階に達したが、その仕組みをどう設計するかが大きな課題であり、この課題解決に大きな力を発揮すると考えられるのがリミックスなのである、という解説をしました。
・藤元健太郎
続いて、D4DR代表の藤元健太郎さんが登壇。藤元さんは、野村総研時代、NCSA Mosaicに出会い、1995年に今でいうオープン・イノベーション、仮想的に色々な企業が繋がってコラボするサイトを構築。以来、今日まで様々な企業コンサルを行ってきている。リミックスというのは、バリューチェーンの再設計と捉えることができる。もともと中世の時代、音楽はサービスであった。大道芸人が街角で演奏して、聴衆が投げ銭をする。パトロンが音楽家を養う。それが、工業製品になって、誰もが買えるレコードとかCDとかになったが、インターネット時代になり、要素分解され、バリューチェーンが再設計されるようになった。どう再設計したらいいかは、実は中世にいろいろなヒントが隠されている。「シリコンバレーじゃないよ」という意味では、日本の大手家電もいろいろと面白いことを始めている。パナソニックが10万円もする、とんでもなく高いコーヒーの焙煎機を販売し、豆も毎月サブスクリプションモデルで販売し、年間45,000円くらいかかるというモデルで、コーヒー好きの間で受けている。私は今、ふたつのリミックス・プロジェクトに取り組んでいる。ひとつは、工業化社会で農作物を「作る人」と「消費する人」の分離が起きていたものを、もう一度、それぞれがIoTを実装したプランターを使って自分で作り、コミュニティで融通し合う「PLANTIO」というもの。もうひとつは、「Slorn」という飲食業のバリューチェーン再構築プロジェクトで、今日、この豆で、このローストで、このバリスタが、この場所で入れるコーヒーを30チケット販売します、というものである、という話をしました。
・山崎亮
続いて、studio-L代表の山崎亮さんが登壇。泉佐野丘陵緑地に公園を作りたいという話があった際に、建築デザイナーが作るのは2割くらいにして、あとは十年かけて市民参加型で作ってはどうか、という提案をしたところ、当時の大阪府知事が、そのほうが安くつくというところが気に入って採用された。毎年、30人くらいパークレンジャーの養成講座をやり、300人くらいのパークレンジャーが「ようこそ」といって迎えてくれる公園を、2009年から作り続けて8期目を迎えたが、あと8年延長することになった。鹿児島の三越の跡地に作ったマルヤガーデンズでは、地下1階から屋上までガーデンというスペースを作り、220のコミュニティ団体が日替わり、週替わりで使っている。同様に大阪あべのハルカス近鉄百貨店本店でも、マチステーションというスペースを作り、縁活というコミュニティ活動をやってもらっている。兵庫県のふくやま病院では、「また来てね」と言える病院のコミュニティ・デザインをした。根室の浄土真宗の寺では「日の出カフェ」やヨガ教室などのコミュニティ・デザインを行った。人口が減少する中、住民が行政に要望や陳情をするだけでは、地方行政は壊滅的になる。そこで、住民が自分たちのことは自分でやるというように意識改革をしていく必要があるが、お金ではない価値で地域のために動こうというデザインをするのが我々の仕事だと思っている、という話をしました。
・パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、まず高木が山崎さんに「パークレンジャーに応募してきた、当初あまりやる気のなかった定年退職後の人たちはどうなったのか?」と質問。山崎さんは、「森の奥で木を切っていると、楽しくて夢中になり、昼時に声を出して呼んでも出てこない。カウベルがいいのではないかと使ってみると、ぞろぞろ出てくるようになった」と答え、会場の笑いを誘っていました。藤元さんは、「定年退職した人たちは、それまで工業化社会の中で、定時に会社に行って仕事をして、というスタイル解放され、江戸時代の人たちのように人生を楽しむことを覚え、楽しくて仕方がないのではないか」と述べ、服部は、「コミュニティということで思い出したのは、ケヴィン・ケリーや自分たちの世代のカウンター・カルチャーだった。彼らが謳っていたのは人間の解放だった」と述べました。そして、藤元さんは、「農業のプロの人たちは、自分が食べていくために、農薬を使わなければならないとか、同じような形の野菜を作らなければならないとかいった制約がある。コミュニティで栽培することで、そうしたプロの制約を崩す挑戦をしている」と述べました。続いて高木は、山崎さんに「コミュニティの活性化には、いろいろなテクニックが必要ではないか?」と質問。山崎さんは、「最初に「イエス、アンド」という話し方のトレーニングをするなど300種類くらいのテクニックがあり、それらをTPOで使い分けている」と回答。藤元さんは、「ネットで炎上が起きやすい背景には、自分事ではない場所、他人の場所だと何を言ってもいいとなりやすいからだ」と指摘しました。服部は、「インターネットは、70億人が交流できる可能性があるコミュニティ。それを実現するにはコミュニティ・デザインが重要で、 AIやVRを活用することも必要となってくる。とはいえ実は、昔からの経験の中に問題解決のヒントがあるのかもしれない。単に皆で自由に発言すればいいというだけでは崩壊してしまうが、ウィキペディアのように、編集を入れることによって成功している例もある」と発言しました。それに対して山崎さんは、「ウィキ的なやり方が向いているテーマもあり、そうでないテーマもある。今、ネット上ではそうした試行錯誤が繰り返されているような気がする」と発言しました。続いて、高木が「ワークショップでは、ファシリテーターが重要だと言われているが、それについてどう思うか?」と質問し、山崎さんは、「優れたファシリテーター、コミュニティ・デザイナーになるにはどうしたらいいかとよく聞かれるが、こればかりは偏差値で計ることができず、難しい。ただ、ひとつ言えるのは、江戸時代や中世アーサー王伝説の時代の人たちが持っていた人間力。工業化社会になって、機能分化、専門分化していって、ノーベル賞を取るような人たちが集まれれば、世界の課題は全部解決するのだという幻想を抱く前の人たちの人間力のようなもの。百姓という言葉には、百の仕事をこなせる、百のテクニックを持っている人たちという意味があるが、いろいろなことにちょいちょいかんでいる人というのは、引き出しが多いという意味も含めてファシリテーター向きなのかなと思う」と回答しました。藤元さんは、「コミュニティにおいてローカリティというのは非常に重要ではないか。今はグローバリズムの進展で、あらゆることが平均化しすぎてしまっている。ウィキペディアもそういうところがあり、もっと“やんちゃな”ウィキペディアが出てきてもいい。ファシリテーターがその場の空気を読み、さじ加減を判断するといったことが、これから大事になってくるのではないか」と発言しました。服部の「19世紀、産業革命の反動で、ジョン・ラスキンやウィリアム・モリスが新しい芸術運動を起こしていった」との指摘に対して、山崎さんは、「ラスキンは、美しさの定義の中に、それを作っている人たちが楽しんでいるかどうかという価値を担保しようとした。中世のゴシック建築の教会が美しいのは、職人たちが楽しみながら作っていたからである。300くらいある鷲の彫刻のいくつかはベーッと舌を出したりしていて、実に面白い。ラスキンは、手仕事を重んじたために、金持ちしか買いに来れない店を作って非難され、ちょうどそのころ英訳されたマルクスの『資本論』を読んで、社会主義運動に走ったが、社会を変えないと美が評価されない、という意味では今の時代に重なるものがある」と発言。最後に、藤元さんは、「儲かるという構造の破壊がリミックスの本質で、マネタイズがシリコンバレーだとしたら、我々は価値の総和を増やすバリュタイズを目指している」と発言。山崎さんは、「三年寝太郎の話が今、重要な気がする。村の若者が寝てばかりで働かないので、長老たちが行って、もうちょっと働いたらどうかと説教する。若者が寝たまま、働いたらどうなるのかと問うと、働いたら金が儲かる。儲かったどうなるのかと問うと、儲かったら大金持ちになって、毎日寝て暮らせるようになる。だったら、もう寝て暮らしてます、という話。儲かるという言葉には、金が儲かるという他に、友を儲けるとか、経験を儲けるという意味もある。それを自分の人生の中でどれだけ多様化していけるかが大事なのではないか。これまで全国200箇所くらいのコミュニティ・デザインをやってきているので、蕎麦の季節になると蕎麦が贈られてきたり、新米やら柿やら秋刀魚やら色々なものが贈られてくる。お金もらうより、感謝の手紙とともにそういうものをもらうほうがずっと嬉しかったりする」と発言。それを受けて高木が、「日本の「円」は、人と人との「縁」からきている。人と人との「縁」をつなぐツールとして使われてきたものが、いつの間にか利益を上げなければならないということになった。もう一度「縁」の原点に戻って、そういう豊かさに戻っていくということが大切なのかもしれない」と結びました。
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